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タイチはかつてのスランプより今の方がマシだと、精力的にメニューをこなす。日に日に体力筋力を取り戻し、飛び立つ力を蓄え、待ち遠しそうに竜の背を見上げる。
二人きりで竜神様の前で指環を嵌めあっただけの(中学生のままごとみたいな)結婚式は、モチベーションを上げてくれた。新居も外観がほぼ出来上がり、これもかなり効いた。
後ろ向きに生きるなんて勿体ない。
真っ直ぐに前だけを見て進もう。俺の後ろをついて来たタイチは今、すぐ隣で並んで歩いてくれる。だから大丈夫だ。もう大丈夫だ。
「柊!ゆきのオムツ取ってースタイもー!」
「ほーい」
ゆきも日に日に大きくなる。フワフワの髪が伸び、顔がハッキリしてくると、もう、もう、目の中に入れても痛くないほど可愛い……!
「美少女は間違いないけど、どっち似だろ」
「さあ。最近柊に似てきた気もする」
「似てる訳ないだろ」
「家族は似るんだってさ。犬だって飼い主に似るって言うし」
「ゆきは犬じゃないっ」
「俺は犬なのに?」
「お手」
「わん」
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