毀傷《きしょう》

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毀傷《きしょう》

 わが家には,八歳になるメスと十二歳になるオスの二匹の雑種猫がいる。  二匹とも近所で拾った今時の言い方をすれば「保護猫」ってやつだが,二匹とも,まだ目も開かない仔猫が捨てられていたのを偶然通りがかった母親が見過ごせなくなり拾ってきて,そのまま当たり前のようにわが家に居ついた感じだった。  両親ともに大の動物好きだったこともあり,昔からうちにいる動物は捨て猫か余所で飼えなくなった老犬を施設から引き取って飼っていた。  そのため私も妹も幼いころは,子供心に動物は飼ったら数年で介護が必要な生物なのだと思っていた。  そんなわが家の頂点に立つメス猫はミカン,ミカンより年上だが完全に頭が上がらないオス猫は大福といった。  単に拾ってきたときの見た目で名前をつけるのが,昔からわが家のパターンだった。ミカンは当然その毛色から,大福は赤ちゃんなのに大福のように白くてもちもちした感じからだった。  いつも母親が名づけ親になるのだが,これまでも見た目でつけた,ブサ夫君,ハゲマルちゃん,コンビニの前で拾ったからセブン君,どこにでもオシッコをするので放尿丸,と常に母親の微妙なネーミングセンスが光る適当な名前ばかりだった。
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