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「お婆ちゃんさぁ……幸せだったと思う?」
「え……? なに,急に。どうしたの,お姉ちゃん?」
「うん……私たち,孫じゃん。でも,お婆ちゃんのこと全然知らないっていうか,ずっと怖がってたじゃん……」
「うん。お婆ちゃん怖かったっていうか,絶対にみんなの前に出てこなかったし」
「なんでだと思う?」
「さぁ……子供が嫌いなんじゃない?」
「お婆ちゃん……人前に出られなかったのかもよ……」
「え……? なんで……?」
「うん……ちょっと気になることがあってね……」
「なになに? お姉ちゃん,なにか知ってるの?」
「うん……お婆ちゃんの左手なんだけどね……」
深呼吸するように大きなため息をついた瞬間,父親の見たこともないような恐怖と怒りに震える視線が私に向けられていた。驚いて母親を見たが,母親も口を両手で押さえて驚いた様子で私を見ていた。
「え……? なに……? どうしたの……? お父さん,怖いんだけど? お姉ちゃん,なんかマズイことしたの? なんで? お父さん怒ってんの?」
「わかんない……でも……たぶん,お婆ちゃんの左手のことだと思う……」
父親の目は充血し真っ赤になっていた。母親も驚きを隠せないのか,私を見て困惑していた。両親ともに緊張しているのが感じられ,妹も見たこともない二人の表情に戸惑っていた。
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