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「でもな……家じゃお袋に暴力をふるってばかり……いまでいうDVってやつだ。酒が入ると俺たち……子供たちも殴られ,蹴られ,一番上の兄貴はそれが耐えられなくなって遠くの全寮制の高校に進学した」
「そうなんだ……」
「ある日……ずっと昔,俺が幼い頃なんだけど,ひどく酔っぱらった親父がお袋を縛り上げて……殴る蹴るの暴行を加えた後,剪定鋏で左手の第一関節から先を全部斬り落としたらしい」
「うん……知ってる。さっきそれを見た……」
「そん時にお腹にいたのが産まれることのなかった俺の弟か妹だ……お袋は女の子が欲しかったらしくてな……」
「そうなんだ。でも,なんとなくそうだと思った……よくわかないけど,そんな気がした……」
「それからしばらくして,親父は若い女のところに入り浸るようになったんで,家にいることがなくなったんだ。家の中は平和になったんだけどな……」
「うん……」
「でも,若い女に愛想をつかされると……突然,家に戻って来て,酒呑んでは暴れてな……」
「うん……」
「さすがにその頃になると,周りも気づいててな。誰も外面のよい議員さんである親父を信用しなくなってな。最後は酒の呑み過ぎで肝臓壊してあっさり逝っちまった。まぁ,家族は大喜びだったんだけどな,お袋はなぜか泣いてたんだよ……」
妹の表情が険しくなり,眉間に深い皴がくっきりと表れていた。この表情をする妹は,大抵なにか許せないことがあり,しばらく不機嫌になった。
「お爺ちゃん,最低。会ったことないけど……」
妹が文句を言いながら水を一口飲むと,さらに険しい表情になった。
「水道水,まっず……」
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