毀傷《きしょう》

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 妹が優しく撫でるように何度も前脚を確認すると,左脚を触る度にスッと脚を引っ込めた。 「怪我はしてないっぽいけど……なんだろ……痛がってるのかな……?」 「傷とか……シコリみたいなの,ない?」 「うん……そうゆうのはないっぽい……。お姉ちゃんも触ってみて……」  妹と二人で何度もミカンの左脚を確認したが,傷やシコリはなかった。それでも触る度に左脚を引っ込めるので,なにか問題があるのだろうと丁寧に毛を掻き分けて肌を観察してみたり,少し強めに握ったりしてみた。 「傷とかないね……」 「じゃ……じゃあ,病気かな……? お姉ちゃん,病院に連れてってみる?」 「どうだろう……。痛がってはいないみたいだけど……」  ミカンの脚を何度も揉んでみたが,痛がる素振りはみせなかった。揉まれるたびに脚を引っ込めるが,目をクリクリさせながら脚を前に出したり引っ込めたりを繰り返した。 「どうしよう……。お姉ちゃん,やっぱ病院に連れてってみようよ」 「うん……。でも,私たちだけじゃ無理だよ……。病院まで遠いしお金かかるから。お母さんが帰ってきたら相談しよ……」  妹は心配そうにミカンを抱きしめて優しく撫でた。強く抱きしめられたミカンの顔が潰れて歪んでいたが,その表情すら愛らしく病気や怪我でないことを願った。 「大丈夫だからね……。お母さんが帰ってきたら,病院に連れて行ってもらおうね……」
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