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女性の姿が闇に消え,残された私は目の前の二人の男の子たちが黙ってこちらを見ているのに気がついた。どこに目があるのかわからないその顔から禍々しい視線を感じ,声が出せず,なにもできないまま二人のほうを向いていると,男の子たちは黙ったまま静かにその姿を闇に溶け込むように消えていった。
『なんなの……もう,マジで怖いんだけど……わかんないよ……なんなの……』
薄暗い部屋のなかでテレビの光が点滅するように部屋を明るくし,チリチリと壊れたラジオから漏れ聞こえるような音が静かな部屋に人の存在感を残した。
目の前でゆっくりとテレビの灯りが消えてゆくと,チリチリと聞こえていた音もボリュームを絞るように静かになっていったが,私の頭の中には聞いたことのないメロディが静かに流れ続けた。
『マジでなんなの……』
ゆっくりと部屋の灯りが消えてゆくと,私一人が完全に闇のなかに残された。音も温度もなにもない闇のなかで,自分の手足と空間の境目すら曖昧になって皮膚が闇に溶け込んでいくように思えた。
何度も手を閉じたり開いたりしたが,もはや自分の指が何本あるのかさえわからなくなっていた。不思議と気持ちは落ち着いていて,冷静に自分の状況を認識しているような気がした。
『穢れってなんだよ……穢れた血の子って誰だよ……』
お婆ちゃんらしき女性の腰にぶら下がっていた男の顔が浮かび,あの男が誰なのか,なんで男の首がぶら下がっているのかを考えた。まったく見覚えのないその顔は,無機質で人形のようにも見えたがどこか物悲しく,首だけになったことを納得しているように思えた。
『なんなんだよ……なんで,男の首をぶら下げてんだよ……キモすぎるんだよ……』
涙が溢れ出たが,声が挙げられず,心の中で怯えながら悪態をついた。
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