異形

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 完全に外が明るくなり,ブラインドを降ろしていても部屋の中が柔らかい陽射しに包まれるように明るくなった。部屋の中とは違い,一歩外に出れば八月の陽射しは肌を刺すように熱く,黒いアスファルトを容赦なく溶かし,辺り一面に石油のような息苦しい臭いが立ち込めた。  早朝とは違い,熱い焼けるような空気が網戸をすり抜けて部屋に混じり込んだ。一晩中開けてあった窓を網戸と一緒に閉め,エアコンのスイッチをいれると,実家の古いエアコンとは違い,あっという間に音もなく部屋が涼しくなっていった。  妹が目を覚ましたころには,叔父さんと叔母さんはとっくに仕事に出ていた。私たちは家の物に触れないように細心の注意を払いながら,慣れない他所の家で大人しくテレビの前に座り,一日中,まったく興味のない番組を黙って観て過ごした。日中は,叔父さんの家のこのリビングだけが私たち二人の世界でもあった。 「お姉ちゃん……つまらないね……」 「うん……お父さん,早くお坊さんにお祓いに来てもらったらいいのにね」 「お祓いって,お祓いされたらお婆ちゃんどこに行っちゃうんだろうね? 天国ってあるのかな?」 「さぁ……でも,オバケがいるんだったら天国も地獄もあるんじゃない?」 「やだなぁ……私,絶対天国行けない自信あるんだけど……」  慣れないリビングの慣れない他人の家の匂いが居心地を悪くした。妹はぼんやりとテレビを観ながら,ソファの上で両膝を抱えた。 「ねぇ……あんた,なんかやらかしたの?」 「なにもやらかしてないけど,まだまだこれからじゃん。私,中学生だよ? これから先,絶対なにかやらかすもん。お姉ちゃんだって,きっとなにかやらかして私たち姉妹,絶対に地獄行きだよ,きっと」 「なに,勝手に決めつけてんのよ……」
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