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「ねぇ……お姉ちゃん……」
「なに……?」
「お姉ちゃん……お姉ちゃんにだけ,お婆ちゃん,見えてるんでしょ……?」
「うん……でも,私だけかはわかんないよ……あんたも見たじゃん」
妹はソファの上で膝を立てて座り,膝の間に顔を埋めると,聞き取りにくい声でぼそぼそと呟いた。
「私……あれ以来,お婆ちゃん見えないんだけど,お婆ちゃんが私の近くにいるのは感じるの……お姉ちゃんが幻覚っていうの? よくわかんないけど,お姉ちゃんがお婆ちゃんを見ているとき,私もお婆ちゃんを感じてたの……」
「え……?」
突然,胸の奥がざわつき,ギリギリと締め付けられるように苦しくなった。いつの間にか呼吸の仕方を忘れてしまったのかと思うほど,酸素が身体に入って来なくなり,水中に沈められているような息苦しさに必死に深呼吸をした。
膝をかかけて顔を埋める妹の小さな身体は,私が幻覚を見ているときに,私とは違うなにかを経験していた。それが私にはなにかわからなくて,私の不安と恐怖を増すと同時に,妹が心配になった。
「お婆ちゃん……お爺ちゃんに虐められてたって言ったよね……左手の指先,全部斬り落とされたって言ったよね……」
「う,うん……」
妹が膝の上に置かれた頭を微かに傾げるようにして私を見た。前髪が顔を隠していたが,髪の毛の間から妹の目がしっかりと私を見つめていた。
「お姉ちゃん……私ねぇ……お婆ちゃんがどんな人だったのか,少しだけわかった気がするの……」
「なんで……?」
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