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「私を壊してって!! だからね……全部,私が望んだの……この全身の傷も火傷も骨折も……ぜぇ~んぶ,私が望んだの……全部求めたのよ!!」
「え……?」
「だから私のことを心の底から愛するって誓ってくれたお爺ちゃんに望んだの……お爺ちゃんが私を本当に愛するなら……他人には理解できない,この酷く歪んだ抑えきれない私の欲望を満たしてって……」
「欲望って……な……なに……? なに言ってんの?」
「そう言わないと,お爺ちゃんは理解できないから……そう言わないと私を壊してくれなかったから……私を救ってくれないから……」
髪の毛の間から覗く私の知らない驚くほど澄んだ透き通るその瞳は,一切の穢れのない少女のようだった。見つめられると引き寄せられそうになるほど,透明な澄んだ湧き水のようなその真っ黒な瞳は私に底なしの不安と恐怖を与えた。
「でもねぇ……結局……あの人は私にそれを与えられなかった……応えてくれなかった……」
「さっきからなに言ってんの? あの人? 私? なんなの……?」
「だから私は子供たちをもう一度産みなおすの……全員父親の違う子供たちに……誰が父親かもわからない。そんなあの子たちの母親が……ずっとずっと望んでいたものを……誰も私に与えてくれなかったものを最初からやり直して与えてもらうの……」
「ちょ……ちょっと,あんたなに言ってんの? 冗談だとしたら笑えないから!」
「あの人は,これが限界だった……」
妹は左手をひらひらとさせた。髪の毛の間から覗きながら,悪戯が見つかってしまった子供のような純粋な目で真っすぐ私を見た。そして薄っすらと微笑んだかと思うと,微かに唇を震わせた。
『ギギギギギギ……ギギギギギギ……』
妹の口元が微かに開き,ひび割れて歪んだ口から再び不快な笑い声が漏れた。その笑い声は,すべての歯を抜かれ,舌を焼かれ,喉を潰され,機能しない肺から微かに漏れる空気が穢れとともに奏でる耳障りな雑音でしかなかった。
『ゴメンナサイネェェ……モウ……タエラレナイノ……』
真っ黒な口を微かに開き,私を見つめて不快な雑音を発しながら妹は白目をむいて意識を失い,その場で崩れ落ちソファの上に崩れるように横たわった。
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