森の少女と町の男

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「ここは、どこだ」  森だ、森の中。こんな自問自答をずっと続けているとそろそろ気が狂いそうだ。そもそも酒に酔った勢いで首都を抜け出したのが間違いだった。 「もうむりつらいかえりたい……」 「あれ? 誰かいるんですか?」  森から声が聞こえる、森の神だろうか。 「誰かいるのか?」 「はーい、少し待っててください」  少女が姿を現した、歳で言えば10代後半だろうか。こんな森の中に少女がいる状況が気になるのだが。 「旅人さんですか? どうしてこんなところに?」 「いや、まあ。旅人みたいなものかな、気づいたらこんなところに来てた」  彼女の視線は好奇心に満ち溢れている。木漏れ日を浴びて赤みを増す茶色い髪は森によく溶け込みそうだと思った。 「よかったら私たちの村に来てください! お疲れでしょう? 顔に書いてありますよ」  行くあてもないので彼女についていくことにした。  話によると彼女はこの森にある村の子で、場所が場所なだけに外とのかかわりはほとんどないらしい。だからあんなに楽しそうだったのか。
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