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「見えてきましたよ、あそこが私たちの村です」
想像していたよりおおきかったそれの門をくぐり彼女に連れられるままに歩いていった。
「あっ、おじいさーん。ただいまー!」
大きな建物の下でおじいさんやおばあさんたちが集まって何か話をしていたようだ。
「後ろのそいつは誰だ?」
「まて、この男首都から来たのではあるまいな?」
「災いを持ってくるぞ!」
長老たちは思い思いに俺を見た感想を述べていく。
「首都から車両が来ました!」
どこからか現れた青年の声に反応して外に出ていた人たちが屋内に入っていく。俺も彼女に連れられて近くの建物へ、外にいるのは先ほどの長老たちだけだった。
いかつい装甲車から防護服に身を包んだ誰かが2人出てきた。
「男を捜している、首都から脱走し現在も逃走中」
ピラッ、と出してきた紙にはまぎれもなく俺の顔写真が写っている。
「そのような男は見たことがない、どうやらこちらには来ていないようだが」
「そうか、なにかあれば通達せよ」
防護服たちはまた車に乗り込みどこかへ消えていった。
「なんで嘘ついたんですか? あそこにいるって言えばよかったのに」
単純に疑問だった、見ず知らずの男をかくまう理由などない。災いがどうのとか言っていたし。
「心配するでない、なにかあればすぐに首をはねよう。旅人へのねぎらいをまだ済ませていないのでな」
その日の夜は盛大に歓迎の宴が催された。旅人へのねぎらいやら何やらで宴を開くのがこの村の慣習らしいが、彼らを見ているとどんちゃん騒ぎをするための理由がほしかっただけなのではと思ってしまう。だがにぎやかな雰囲気を感じているとそんなものはどうでもよくなった。
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