0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「やはり災いをつれてくるというのは本当だったか!」
元気な長老たちが話している。発祥した後治ったように元気になるのもこの病気の症状のひとつだ、治ったと思い喜んでいるとしばらくして眠るように息を引き取る。完治したかどうか見分けがつかないがそのまま回復したという人を見ていないあたり見分ける必要もないのだろうか。
「いますぐあの男の首を祭壇に……」
また一人いなくなった、彼に与えられた猶予は今までで一番短いものだった。
あの男を捕まえろ、今にも死にそうな人間たちがそういって俺たちの家の前にやってきた。最後の猶予を得た村人たちは俺を独房にぶち込み生け贄の儀式の準備にとりかかっている。
ついにその儀式は執り行われることはなかった。なんとかして開けた牢獄を抜けて彼女の家へと向かう道中、おそらく最後の村人となる男が背中から迫っていた。
「お前さえ、お前さえ来なければ!」
「危ない!」
そう言われて突き飛ばされた俺は男の刃を受けず、男は仇討ちを果たせないままにこの世界をたった。
「大丈夫でした?」
彼女はまだ生きていたらしい。
「また会えたな」
「そうですね」
「俺のことを恨んでいるか?」
「いえ、恨んでいません」
ああ、やめてくれ。俺のことを許さないでくれ。
「一番最初にかかったのに死ぬのは最後なんですね」
不思議、といいながら笑う彼女を見て罪悪感を抱えきれないほどに感じる。
「でも、もうそんなに……長くないかもしれません」
「すまなかった」
「泣かないでください」
彼女に抱きしめられる、その温かさはまだ生を感じさせてくれる。
「大丈夫ですよ、私がついていてあげますから」
――その日、地図からひとつの村が消えた。
最初のコメントを投稿しよう!