階段

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 バイト終わりにでも、休日でも、講義の日でも、絶やすことなく毎日この階段の下に立った。そして心から彼女を想った。周りの音など耳に入らないほどに。   律儀でも馬鹿で結構。どこかで偶然すれ違って、目が合えばそれで良い。その時は俺も彼女も互いに知らないし、俺も彼女だと気づきはしないだろう。もし、縁があって2人に関わりが持てたならばどんなに素敵だろう。そんな邂逅を夢見ているからこそ今は会うべきではないのだ。  やはり、あの部屋になかった。 映画フィルムはどこにもない。  いつからこんな思想になったのか。愛する人と会えなくても、顔も声も知らなくても、この世のどこかで生きていればそれだけで十分だと。  愛する人に続く階段。 俺は目を瞑り、まだ見ぬ女の子へ祈りを捧げる。 自分でも、信じられないくらい君を愛している。こんなこと、他の誰かが知ったら馬鹿げていると言われるだろうけど、間違いなくこの気持ちは本当だ。今思うのは、生きていてくれてありがとうってこと。目が覚めたら最愛の人が傍にいる。大丈夫、独りじゃない。もう苦しまないように、2度と自分を殺さないで。 だから いつか逢う日まで、どうか元気で。  隅に埃が溜まっている、すっかり見慣れた景色をしばらく見上げた後、俺は地下にゆっくりと下りた。
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