ストーカーは誰

1/4
602人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ

ストーカーは誰

 今日もいつもの帰り道。  振り返るといつもの君がいる。僕が気が付いていないと思っているのだろうか。  『鴻池さん、何にします?』  総務の黒縁眼鏡の君。夜道の君と同じ熱に気がついたのは会社の前の定食屋だった。斜め後ろから届く視線に。ああ、この視線。いつもと同じ熱い視線だとぞくぞくと震えた時に「鴻池」と呼ばれた君がいた。振り返る僕の視線を避けて「いつものを」と答えていた。  へえ、同じ会社なんだ。  気が付かない振りをして、斜め後ろから送られる熱い視線を感じていた。顔を見たいけれど、見たくない。振り返って視線が交わったら終わってしまう気がした。体温が一度上がって、熱くて手が震えていた。  君に気づいたあの日から僕は君のストーカー。  血液型はA型、好きなのは生姜焼き定食、コンビニおでんの牛筋。飲んでいるコーヒーはボトルに入ったブラックコーヒー、冬でもアイスしか飲まない。  地下鉄で二駅ぶんだけ僕の家より会社に近い。同じ路線を使っていたのに気が付かなくてごめん。いつも乗り越して僕の家まで送ってくれていたんだと知る。     
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!