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「おはよ、遥くん」
「んー…栞おはよ、」
リビングに行くと栞が二人分の朝食を並べているところだった。まだ完全に覚めきっていない目を軽く擦りながら自分の分の置かれている椅子に座る。
そういえば今日は懐かしい夢をみた気がする。といってもたった5ヶ月前の筈なのにもう随分前のことみたいだ。
栞が親戚ではないのにこれから一緒に暮らすなんていきなり言い出した時はびっくり…というより混乱したんだっけ。
その後、栞は父さんの訃報を聞きつけた知人でお世話になったから俺を引き取りたい…とかなんとか、って話だったような気がする。確か。
その後は親戚やら法的手続きをあっという間に片付けて…で、今に至ると。
この5ヶ月、受験やらですこしバタバタはしたけれどそれだけ。その他の生活についてはそれなりに穏やかな時間だったと思う。
俺は最初、栞の事を少し警戒していた。父さんの知人…といっても俺にとっては知らない人間…の筈。
…そう。知らない。知らない人、の筈なのに、何も思い出せないのに、俺は栞を知っているような気がした。
まぁ、それも今となっては気にならなくなった事なんだけど。
「遥くん?どうしたの?」
「ん、え?なにが?」
「いや、手が止まってたからどうしたのかな、ってね」
夢を思い出しているだけのつもりがいつの間にか考え込んでいたようだ。
「今日から高校だし、いろいろと」
実際どんな人達がいるとか勉強とか部活の事は気になるし。そこまで嘘ではないだろう。
「あー、そういえば今日からだっけ?高校」
栞は忘れていたらしい。
普段から栞には日付感覚とか曜日感覚が麻痺している節がある。今日が何日かとか高校が何日から始まるとか把握してないのかもしれない。
「楽しい高校だといいね」
「ん。」
栞は人懐っこい笑みを浮かべ、机越しに俺の頭をわしゃわしゃと撫で回す。
栞はよくこうやって頭を撫でてくる事がある。子供扱いされているような気もするけど、嫌いじゃない。
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