女神

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「なんで……なんで急に見えなくなるんだよっ!」  俺はそう叫ぶと、アイツを探して辺りを見回した。やはり見当たらない。 もしかして、あの映像を見たときの衝撃で能力が無くなってしまったのだろうか? そういえば、走るのに夢中で気づかなかったが、ショッピングモールには人間しかいなかった。 「くそっ!」  俺は手近にあったロッカーに思い切り頭突きをした。すさまじい衝撃音と激痛。彼女の目に脅えの色が灯った。 「見えろ! 見えろ! 見えろ!!」 何度も何度も、頭を打ち付ける。頭を打った時に能力が身につき、映像の衝撃で能力を失ったとしたら――もう一度、強い衝撃を与えたら……。  騒ぎを聞きつけた警備員や野次馬が集まる。俺の額は切れて血が噴き出し、視界がかすみ始めていた。意識が飛びそうになる。もう――。 『1852』 アイツの声だ。 「……2581番! 開けて! 早く! 赤ちゃんが入ってる!!」 俺がそういうと彼女が2581番のロッカーにすがりつく。カギはかかっていなかった。 女神が4本の腕を伸ばし、彼女と、その腕の中にいる袋詰めされたサティを抱きしめると、光があふれ、女神は白いサリーに身を包んだ美しい姿に戻る……のを、かすむ視界の中でとらえながら、俺は意識を失った。
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