第2章.出会い

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第2章.出会い

 見知らぬ人の突然の来訪。それも、私と同じくらいの少女。 私はわずかな驚きと共に、彼女に顔を向けました。 「あ、ごめんなさい、間違えちゃった!!」  それが彼女の第一声でした。何の事はありません。 彼女はただ道に迷い、病室を間違え私の部屋に転がり込んだのです。 「いえ」  そう小さく二文字を返し、私は再びパソコンの画面に視線を落とします。 それでこの出会いはおしまい。普通ならそうなるはずでした。 「おぉー、あなたパソコン使えるんだ!  すごいね!ねえねえ、ちょっとお話しない?」  彼女は開けた扉を静かに閉めると、私の方に駆け寄ってきます。 何がそんなに楽しいのか、満面の笑みを浮かべながら。 対して私は酷く動揺しました。 だって、人と話す事なんてほとんどないから。 「えあ、う、その」 「いいなー、私携帯もパソコンも持たせてもらえないんだよね!  ねえねえ、これどんな風に使うの?」  無邪気に画面を覗き込んでくる彼女を前に、 慌てて画面をタッチしました。 今まで見ていたウェブページ――『安楽死は怖くない』と入れ替わって、 まっさらなページが表示されます。 お父さん対策によく使うテクニックです。 「えと、あの。これ、ここで、いろいろ、しら、調べられるの」 「すごいすごい!ちょっとやってもらっていい?  ええと、そうだなぁ……」 「『臓器をくれる人の探し方』でお願い!」  ずぐん、何も入っていない胃に酷く重たいものが圧し掛かります。 自然と背筋を汗がつたい、私は彼女の顔を覗き込みました。 「そ、の。もしかして、どこか悪いんですか?」 「まあねー。実は(わたくし)、余命数年の身なのです!  それまでに臓器提供者が現れないと死んじゃうのさ!」  にっこり笑う彼女、その笑顔に絶望の念はいささかもなく。 狂気。そう、その笑みに狂気を感じ、私は声を震わせました。 「こ、こわ、怖くないんですか?」 「むしろほっとしてるかな!  死んだら死んだで、パパとママを楽にさせてあげられるもん。  もちろん生きられるならその方がいいけどねー……」 「って、ど、どうしたの!?大丈夫!?どこか痛い!?」  目の前でほほ笑んでいた彼女が一転、慌てて私にすがってきます。 その唐突な変貌に驚いて。 そしてその変化の原因が私である事にまた驚きました。  目から、涙が零れていたのです。
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