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私の話
「あの……哀しそうですけど、何があったんですか?
良ければあたしに、話してくれませんか?」
その少女は、私にそう言った。
いきなり人の芝居に割り込んで台無しにした。
観客や共演者たちに迷惑を掛けた、本来なら怒鳴りつけている。
でも、私はそうしなかった、出来なかった。
それどころか、話し始めた、自分のことを。
どうしてだろう?
彼女の声が真剣だったから?
本気で私を心配しているみたいだったから?
それとも「哀しそう」と言われたから?
哀しい?
私が?
そんな事、絶対にない!
私の人生は充実している。
女優になりたくて、上京して、劇団に入って……
たしかに稽古は辛いし、生活も苦しい。
でも、恋人ができて、一緒に夢に向かって歩んでいる。
「幸せだったんですね……」
そう、あなたの言いう通り、私は幸せだった……
だった?
ナニ言ってるの?
過去形じゃない、今も……
今?
今、私は何をしているの?
そう、舞台………舞台に立っている!
夢にまで見た舞台にッ!
あの日、彼から言われた……他に好きな女ができたから別れようって。
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