第1章 なんで私の名前知ってるんですか

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コツコツコツコツ…… 胸元まである綺麗に巻かれた長い髪を揺らしながら、高いヒールを鳴らして歩く。 最近引っ越してきたばかりのマンションに到着し、部屋の鍵を開けた。 玄関に男物の靴が何足か並べられているのが目に入る。 颯汰(そうた)の友達来てるのかな? 颯汰とは、一緒に住んでいる双子の弟の名前。 心配性の両親が、二人で住むことを実家から出る条件としたので、2LDKの部屋を借りて二人暮らしをし始めたのだ。 自分の靴を脱ぎシューズクローゼットへ入れる。 そこまで終わったところで、お手洗いから男性が一人出てくるのが見えた。 「こんばんは」 身内の知り合いであろうその人に、とりあえず挨拶をしておく。 すぐに挨拶を返してくれることを想定していたが、なぜか彼は無言だ。 私のことをじっと見つめて、驚いた表情をしている。 ……え?なに? どうしていいか分からず固まってしまい、結果的に暫しの間見つめ合うかたちになる。 「見つけた」 男性は急にこちらを指差すと、呟くようにそう言って近付いて来た。
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