2人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ。そういうことで」
そう言って、叶多は再びコトンと俺の肩口に頭を乗せた。
「叶多?」
「終点まではあと30分。今度は起こしてよね」
にっこり笑って叶多は肩越しに俺を見あげた。
ようやく収まっていたはずの心臓が再びドキンと鳴る。
「あ、ああ。今度はちゃんと起こすよ」
「約束だよ」
叶多はそっと目を閉じる。長い睫毛がふわりと揺れた。
俺はさっきと同じ姿勢で、叶多の肩を抱く。
やはり心臓はドキドキと高鳴っていたが、不思議と緊張はなくなっていた。
ただ、その代わり。
倖せだと思った。
今、此処に、こうやっていることが。
あと少し、こうしていられる時間が延びたことが。
とてもとても倖せだと思った。
今、腕の中にいるこの人が好きで好きでたまらなくて。
好きすぎて。
倖せだと思った。
FIN.
最初のコメントを投稿しよう!