2人が本棚に入れています
本棚に追加
肩を落とし、叶多は困ったように俺を見た。
「どうする? 次で降りて歩く?」
「あ、うん……その……ごめん」
もう、他の言葉が出てこない。
まさか、叶多の寝顔に見とれてて降りるのを忘れてたなんて、言い訳にもならない。
叶多は呆れているのか、怒っているのか、ちょっと考え込むように腕を組んだ。
「ねえ、琉。ひとつ提案」
「……何?」
「ついでだから終点まで行って戻ってくる?」
「……えっ?」
「雨も強くなってきたし、傘もひとつしかないのに、この雨の中一駅分歩くのもなんだし。だったら、終点のセンター街入口まで行って、買い出しして帰ってこようよ」
「え……その……いいのか?」
「いい、いい。というか、そのほうが僕も都合いいし。ちょうど買い置き用のラーメンと牛乳が切れてたの今思い出した」
「……なんか、すんげえ主婦の会話みたいだ」
「何か言った?」
「いや、何も」
思わず顔を見合わせて吹き出すように笑いあう。
最初のコメントを投稿しよう!