願い事ひとつ

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 肩を落とし、叶多は困ったように俺を見た。 「どうする? 次で降りて歩く?」 「あ、うん……その……ごめん」  もう、他の言葉が出てこない。  まさか、叶多の寝顔に見とれてて降りるのを忘れてたなんて、言い訳にもならない。  叶多は呆れているのか、怒っているのか、ちょっと考え込むように腕を組んだ。 「ねえ、琉。ひとつ提案」 「……何?」 「ついでだから終点まで行って戻ってくる?」 「……えっ?」 「雨も強くなってきたし、傘もひとつしかないのに、この雨の中一駅分歩くのもなんだし。だったら、終点のセンター街入口まで行って、買い出しして帰ってこようよ」 「え……その……いいのか?」 「いい、いい。というか、そのほうが僕も都合いいし。ちょうど買い置き用のラーメンと牛乳が切れてたの今思い出した」 「……なんか、すんげえ主婦の会話みたいだ」 「何か言った?」 「いや、何も」  思わず顔を見合わせて吹き出すように笑いあう。
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