願い事ひとつ

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「僕もちょうどこっちに出てくる用事があったから、いるかなあって探してたんだ。よかった会えて」 「…………」 「……琉?」  反応のない俺に、叶多が不思議そうに小首をかしげる。 「どうかした?」 「あ……いや……雨の……」 「…………?」 「……雨の妖精かと思った」  無意識に出てしまった俺の言葉に叶多は一瞬きょとんとした顔をして、次いで弾けるように笑った。 「雨の妖精? それって、降り出した雨の最初の一粒に住んでるっていう、あの妖精? へえ、琉って案外ロマンチストなんだ」  くすくす笑いを引きずりながら、叶多は可笑しそうにそう言った。 「そっか。妖精か……じゃあ、妖精らしく、願いを叶えてあげるよ。君の」  冗談めかして、叶多は更にそう続ける。 「何か欲しいものとか、して欲しいこととかある? たいした力もない妖精だけど、願い事を叶えさせていただきますよ。ご主人様」
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