願い事ひとつ

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「いいから。じゃあ、それが俺の願い事。俺の肩にもたれて寝なさい」 「ね…願い事……?」 「そう。さっきお前言っただろう。妖精らしく願い事叶えてやるって」 「そりゃ言ったけど……それが願い事なの?」 「そうだよ。悪いか」  俺は口をへの字に曲げて、憮然とした表情をした。 「変な願い事」 「いいだろ。どんな願いでも。何でもいいって言ったのそっちだぞ」  叶多はついに吹き出すように笑い声をあげ、そのままの勢いで俺の肩にコトンと頭をもたせかけた。 「はいはい。では、お言葉に甘えて。願いを叶えさせていただきます」  ドキンと心臓が飛び上がった。 「あ……ああ」  声がひっくり返らないようにするのに必死になってしまった。  肩口に触れる叶多の重さ。鼻先をくすぐる栗色の髪。シャンプーの匂い。いや、これは叶多の匂いだ。  暖かくて爽やかで優しい、叶多の匂いだ。  再び心臓が跳ね上がる。  俺はそっと向側の叶多の肩に手を添えた。叶多が可笑しそうに目を閉じたままくすりと笑う。 「別にそんな壊れ物扱うように触らなくても大丈夫だよ」 「あ……う、うん」  肩を抱く。  心臓が早鐘を打つ。  この音が聞こえるんじゃないかとドキドキして、それが更に拍車をかける。
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