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「でも行くよ。僕は行くよ。だって、もう、他には何もないんだから……何も……」
そのつぶやきは、此処にはいない誰かへの報告のつもりなのか、それとも自分自身を奮い立たせるためのものなのか。
ユースは決意するかのようにトンっと自分の胸をひとつ叩くと、ゆっくりと階段を上り始めた。
一歩一歩。一足一足。一段一段。
上るたびにカツーンと靴音が塔の中に響き渡る。
やがてユースは階段の途中、踊り場のようになった少し広い場所まで来て、戸惑ったように足を止めた。
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