2人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、今日も一人。
明るい色の髪をした少年が巨大な塔を見上げていた。
年のころは十四か、十五か。いずれにしてもまだまだ成人には程遠い年齢だ。
あどけないとも言えるその顔に浮かんでいるのは、希望だろうか、絶望だろうか。
「本当に、この塔の最上階に行けば、この世界のあらゆる願いが叶うんだろうか」
少年の口から漏れたつぶやきは、怯えたような不安げな声。
叶えたい願いと、それと同等の戻ってきた者がいないという恐れ。
しばらく迷っていた少年は、結局踵を返すことはなく、懸命に力を込めて、塔の入り口である大きな鉄の扉を押し開けた。
最初のコメントを投稿しよう!