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「あなたは敵ですか? 味方ですか?」
「……少なくとも敵ではない」
敵か味方かと問われて、素直に敵だと答える者はそうそういないだろうに、少年は塔に響く声を信じたのか、ゆっくりとではあったが剣から手をはなす。
「教えてください。此処は伝説の塔。最上階に無事辿り着くことができればどんな願いも叶うという伝説の塔ですか」
そして少年は、塔の声に少しも臆することはなく、大きな声ではっきりとそう問いかけた。
「……そのとおりだ」
この響く声の主は敵ではない。しかもちゃんと自分の問いかけに答えてくれる。
そんなふうに感じて安心したのだろうか、少年はほっと息を吐いて改めて居住まいを正した。
なかなか素直で真っ直ぐな気性の持ち主のようだ。
その後、少年は一瞬どちらへ向けて話せばいいのか迷うふうに視線を巡らせたが、結局入口の扉を背にして真正面を向き、僅かに顔をあげた。
「僕は、ユース。ユース=ティティアといいます。僕は、この塔の最上階に行くために遠い東の村から来ました」
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