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駒
「本日、私は我が君孫権の命にて参りました。我が君は蜀との戦を終わらせ再び和を睦びたく思うております。どうぞ怒りを鎮められますよう。そしてこちらは、我が君からの贈り物でございます」
諸葛瑾殿は劉玄徳様の前でそう言い、最敬礼の構えを見せた。その後従者から木箱を受け取ると、それを差し出す。
「よく戻ったな。張飛」
劉玄徳様は箱を開け、塩漬けにされた張飛の首にただ一言だけ優しく語りかけた。そしてそれと同時に私と張達は鎖で縛られたまま突き出された。
鋭い目でまじまじと私達を凝視する劉玄徳様。しばらく無言で私達を見たあと、
「申し開きがあるなら、申してみよ。これが最後の機会かも知れぬぞ」
ふと哀しげな目で私にそう言った。
「私は一体、どうすればよかったのですか?」
私の腹から出たのは、このたった一言だった。
劉玄徳様は何も答えない。そして暫しの沈黙の後、
「張苞。そちに任す」
ただ一言そう言い、張苞殿を一瞥した。張苞殿は嬉々とした表情で頷くと、配下の者に目配せをした。私と張達は外へと引きずり出された。
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