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白装束
私が寝首を掻いたのは車騎将軍である張飛。主君である劉玄徳様と義兄弟の契りを結び、古くから仕えてきた男で、数多の武功を挙げてきた。10数年前に長坂の戦にて曹操軍の大軍が押し寄せてきたところをただ一騎で退けた話は今でも語り草となっている。兵1万に匹敵すると評する者もいるくらいで、蜀の国の五虎将軍の1人にも数えられていた。
しかし、そのような話は私にも、私の家族にも関係ないのだ。私にとっての張飛はただの非情な人間でしかない。
「范疆、体はまだ痛むか?」
張達がそう言う。私はその問いに無言で頷いた。顔、腕、脚、腹、胸……身体中のいたるところに痛みを感じる。いや、痛まぬわけがない。あれだけのことをされたのだから。
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