白装束

3/4
前へ
/12ページ
次へ
「何だと?貴様は蜀の国の沽券に関わるこの戦を軽く見ると言うのか!」 「いえ、そういうわけでは……ただその……物事にはできることとできぬことがございまして、その……」  張達もそう言うが、張飛の顔は酒のせいか怒りのせいかさらに赤くなった。 「うるさい黙れ!者ども、こやつらをあの柱に縛りつけよ!」  張飛がそう部下に命ずると、私たちの体には瞬く間に縄が巻かれ、柱へとくくりつけられてしまった。事あるごとに幾度となく見た光景。この後に何が起こるかは大方想像がついた。 「うぐっ!」  張飛の持つ棒が私の腹をえぐった。 「貴様のその国を思わぬ曲がった根性、俺が叩き直してくれる!」  張飛は容赦なく私の腕、脚、腹、いたるところを叩きつける。 「うげっ!」  隣からは張達の悲痛な叫び声が聞こえる。隣を見ると、張達の顔にはアザができていた。そのとき、私の頬に激痛が走る。そして口の中に鉄の味が広がった。 「用意すると言わぬか!早く言わぬか!」  張飛はなおも私達を殴り続ける。 「分かり……ました。やり……ます。やります……から……もう許して……ください」  張達がそう言うと、張飛は手を止めた。 「ふん。出来るのに出来ぬと嘘を申していたわけか。性根の腐った奴らめ。まあいい。今日はこれで勘弁してやる。だが用意できぬときは貴様らの命はないと思え。分かったな」  そう吐き捨てて戻っていく張飛の後ろ姿を私は無言で睨みつけた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加