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「何だと?貴様は蜀の国の沽券に関わるこの戦を軽く見ると言うのか!」
「いえ、そういうわけでは……ただその……物事にはできることとできぬことがございまして、その……」
張達もそう言うが、張飛の顔は酒のせいか怒りのせいかさらに赤くなった。
「うるさい黙れ!者ども、こやつらをあの柱に縛りつけよ!」
張飛がそう部下に命ずると、私たちの体には瞬く間に縄が巻かれ、柱へとくくりつけられてしまった。事あるごとに幾度となく見た光景。この後に何が起こるかは大方想像がついた。
「うぐっ!」
張飛の持つ棒が私の腹をえぐった。
「貴様のその国を思わぬ曲がった根性、俺が叩き直してくれる!」
張飛は容赦なく私の腕、脚、腹、いたるところを叩きつける。
「うげっ!」
隣からは張達の悲痛な叫び声が聞こえる。隣を見ると、張達の顔にはアザができていた。そのとき、私の頬に激痛が走る。そして口の中に鉄の味が広がった。
「用意すると言わぬか!早く言わぬか!」
張飛はなおも私達を殴り続ける。
「分かり……ました。やり……ます。やります……から……もう許して……ください」
張達がそう言うと、張飛は手を止めた。
「ふん。出来るのに出来ぬと嘘を申していたわけか。性根の腐った奴らめ。まあいい。今日はこれで勘弁してやる。だが用意できぬときは貴様らの命はないと思え。分かったな」
そう吐き捨てて戻っていく張飛の後ろ姿を私は無言で睨みつけた。
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