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第一章 机に書かれたメッセージ
「何…これ、誰が書いたの?」
美術の授業を終えクラスへ戻ると、三浦侑香の机に、メッセージが書かれていた。
こんにちは。
三浦さんと話したいです。
もしOKなら、机に◯を書いて下さい。
K
侑香は、隣席の香織の肩を突つき、
「香織!見てよ…謎のメッセージ書いてあって、超怖いんですけど」
香織は、侑香の指差す方を見て、
「何々…えぇー!侑香、やるじゃん!丸、書いてあげなよ!」
「だって、誰か分かんないじゃん…それに、今時こんな事してくる人いる?いつの時代だよって感じだけど…Kって、誰だろうね」
「Kねぇ…」
侑香と香織は、クラスで騒いでいる男子を見回した。
「いや、侑香…うちのクラスの人は、あり得ないよ!だって、うちら二、三時間目は美術で、別校舎に行ってたし、誰も教室に戻っていないはずだよ」
「そうか…それに移動教室の時、最後に教室出たのって、私と香織だったよね」
侑香が「K」の正体について頭を悩ませた時、香織が何か気付いたように、両手を合わせた。
「侑香!そういえば…この教室、二時間目は特進クラスの数学で使われているじゃん!きっとその時だよ!」
侑香は勢い良く席から立ち上がり、黒板横に張ってある座席表を眺めた。
「えっと…特進クラス、数学Αコース…特進でAコースって、天才の集まりじゃん…」
侑香は胸をドキドキさせながら、座席表に描いてある、自分の席へ目を向ける。前列で一番窓側の角席ーーそこが、侑香の席だった。
「えっと、桐嶋君…か。えっ…き、桐嶋君!?」
黒板横で大声を上げた侑香は、クラスの視線を浴びた。顔を真っ赤に染め、照れ笑いしながら自席へ戻ると、香織がニヤッとしていた。
「Kの正体…桐嶋君かー!羨ましいなー!」
「ちょっと、香織!シッ!」
侑香は、鼻に人さし指を当てた。
「だって、あの桐嶋君でしょ?一度も同じクラスになった事ないのに、誰もが知っている、あの桐嶋君だよ?顔良し、スタイル良し、性格良し…おまけに病院の息子!侑香、このチャンス…逃した奴は馬鹿だよ!」
「そうかなぁ…そうだよね…あの桐嶋君だもんね」
侑香は筆箱から消しゴムを取り出し、机に書いてあるメッセージを消した。
「あの桐嶋君が…私を?信じられないよ…」
ドキドキしている鼓動を隠すように、シャープペンシルをカチカチ三回強く鳴らした侑香は、少しハート寄りの丸を書いた。
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