第六章 恋の結末

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話せない事を知っても、こうやって文字に書けば、話し合えるよ! 身体の調子、大丈夫なの? 四組の子に、喉の病気って聞いて…再発じゃないよね? そうですね。初めから伝えれば良かった。 もしかして、再発かと思って来てくれたんですか? 実は…ただの検査入院です。再発はしていなさそうです。 良かったーーーーーー! 安心したよ!てっきり、草刈君がいなくなっちゃうかと… 大丈夫、僕はいなくなりません。 そう言えば先程、何で三浦さんの事、気になったか知りたいって言っていましたよね。少し長いですが、書いていいですか? うん、聞かせて欲しいな。 僕は中三から、喉の病気で声が出ないんです。 中学の帰り道、あるお婆さんに道を聞かれました。 でも、上手く伝えられなかったんです。 その時正面から、三浦さん、貴方が来てくれたんです。 僕がお婆さんに、三浦さんの方を指差すと、お婆さんは三浦さんに道を尋ねました。 三浦さんは何度も道を教えたのですが、お婆さんに伝わらず…結局、「私が連れて行く」と言って…それにお婆さんの荷物まで持って、お婆さんの案内をしていました。 その姿を見て、僕は一目惚れしました。 制服を見て、聖柳高校だと分かったので、同じ高校を受験して…でも学年も違うし、上手く話しかけられなくて…結局机にメッセージを書きました。 侑香は、スケッチブックに書かれる文字の数だけ、草刈の事が好きになっていった。 文字を書き終えた、草刈の照れた顔を見て、侑香は口を開いた。 「…一目惚れって事は、私の事、どう思っているの?」 草刈は、耳の先端まで真っ赤に染め、再び文字を書いた。 そう言えば昨日、三浦さんが言った言葉、覚えています。 自分の気持ち…つまり、 「好きって言葉は、直接言ってよ」と。 草刈は前髪を横に流し、侑香の目を見つめた。喉をゴクリと鳴らし、小さく口を開いた。 す き で す 声の無い、唇だけの動きで気持ちを伝えた草刈の唇に、侑香は返信のメッセージを伝える様に、そっと唇を重ねた。 「私も大好きだよ、草刈君」
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