第三章 Kの正体

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授業が終わるチャイムが鳴り、侑香は目を覚ました。 保健室の先生に礼を告げ、未だ晴れない気持ちと共に教室へ戻る。 教室の、扉のガラスを覗くと、前列窓際の席に人影が見えた。 「香織、もう戻って来てる…心配してくれてるのかな、香織!」 ガラッと扉を開き、自分の机がある方へ声を掛けると、 ーーそこには、見た事のない男子がいた。 侑香が「K」だと思ってきた桐嶋ではなく、そこには色白で身体が細く、前髪は眼鏡に接する程長いーー想像とは異なる「K」の姿があった。 鉛筆を持って、机に文字を書いていた男子は、驚いた様に身体をビクっとさせた。 「あなた…もしかして…K、さん…?」 男子は困惑した様に辺りをキョロキョロ見渡し、頬を赤く染めた。 はにかんだ笑顔を見せると、侑香の横を通り過ぎ、無言のまま、急ぎ足で教室から去って行ったーー。
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