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自分が住んでいたマンションの屋上に立ち、私は一つ溜息を吐く。外はすっかり夜だが、他のマンションや建物の灯りがやけに眩しく見えた。こんなに眩しかったっけか。
歩き出して、マンションのフェンスに近づく。フェンスの前まで来ると、それは私でも乗り越えられるほどの高さだった。足元には私の靴と、私が書いた遺書が残されていた。近くでパトカーや救急車のサイレンも聞こえてくる。
そう。察しの通り、私は既に死んでいるのだ。
しかも、『マンションの屋上から飛び降り自殺』という形で。
思えば幼い頃から、良い事なんて何一つなかった。
両親は私が3歳の頃から私に暴力をふるうようになった。理由は、私が母親の元カレにひどく似始めたかららしい。勿論私は母親の元カレの顔なんて知らない。だが母親が言うには、私はその元カレの娘らしい。
暫くしてとある施設に預けられたのだが、そこでもひどい仕打ちを受けた。
そこで私は奴隷のように働かされたのだ。炊事、洗濯、掃除、全部私の仕事。どれか1つでもサボれば罰としてその日1日飲まず食わずの生活をしなければならない。
学校に通える歳になると、施設からも追い出され、マンションを用意され1人で暮らさなければならなくなった。学校では両親の事について色んな人に聞かれた。だが暫くして、それは俗にいう『いじめ』へと変化する。その『いじめ』は歳を重ねる毎にエスカレートしていく。
そして、中学を卒業する頃には、身体も心も限界に達していた。
気づいたら、私はマンションの屋上に上り、屋上のフェンスを乗り越え―屋上から飛び降りていた。
―今の私は、俗にいう『地縛霊』のようなものになっているのだろう。
それとも、ちゃんと成仏する前なのだろうか。
先程、警官の1人が私の靴と遺書を見つけ手に取ったのが見えた。この後恐らく署に持ち帰って色々調べたりするのだろう。
遺書に、『私が死んだ理由』は全て書き込んだ。両親からの虐待の件も、長い間受けてきたいじめの件も、全て明らかになるだろう。正直「ざまあみろ」だ。
これが奴らへの『復讐』になるかどうかは分からない。
だが、知って欲しい。私がどれだけ苦しんだかを。私がどれだけ辛かったかを。痛かったかを。悲しみを。寂しさを。
―これが、『私が死んだ理由』だ。
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