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「私が死んだ理由、い、一緒に探してくれませんか」
ドモったのがポイント高い。末尾の「せんか」に奥ゆかしさを感じた。
「え~と、どういう意味なのかな?」
唐突に訪ねてきた彼女を見た。
よくない運命の日には、とても寝起きが悪い。大概いつもそう。今日もそうだった。
「これです。これを書いたんです」
いきなり紙を広げた。
紙には“私が死んだ理由 岩永 翼”と書いてある。
僕と同姓同名だけど……。
「ごめん、まだ状況と意味がつかめない」
「あっ、いきなりお邪魔します」
「お邪魔じゃないけどね。とりあえず上がってよ此花さん」
僕は頭を掻きながら、気まずい表情で下唇を噛んでいる彼女を部屋にとおした。
彼女──此花桜子さんは、同じスーパーで働いているバイト仲間だ。
もっとも、あまり面識はない。
それなら、なぜアンダーネームまで知っているのか?
誰も見ていないときに、彼女のタイムカードを覗いたからだ。
それから丸3日間、羞恥心で悶々と苦しんだものさ。
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