タクくん

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タクくん

部活が終わった。 ボールを片付ける者、バスケのゴールを片付ける者、壁際に座り汗が引くまでダベっている者、そんな彼女らを尻目に、今日の私は、キャプテンのくせに真っ先に部室に戻り、制服に着替える。 皆には「今日、これから塾行かなきゃ…」と嘆くふりをしながら体育館を出てきた。 すごい汗かいたからシャワー浴びてから帰りたいくらいだけど、その時間も惜しい。 早く彼に会いたい。 私にとって人生初めての彼氏。 とりあえず入念にデオドラントスプレーして、額の汗を抑え、遅れて部室に帰ってきた皆にバレないように、待ち合わせ場所の少し離れた第2体育館の裏手にある西門前に走る。 “ちょっと遅れちゃった。待ってるかな?” そう思いながら全力疾走。 そしてまた汗をかいてしまうという悪循環。 なにやってんだか。 「(若野先輩!)」 夕暮れ迫る校舎の陰から、小声なのか大声なのか分からない声で私の名前が呼ばれた。 私は立ち止まり、名前の呼ばれた方を振り返る。 そして息を整えながら近づいた。 「ごめん。待った?」 「いや、俺もいま来たとこ」 そう言って彼、原田拓也は笑った。 彼は二つ下の高校一年生。     
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