17人が本棚に入れています
本棚に追加
タクくん
部活が終わった。
ボールを片付ける者、バスケのゴールを片付ける者、壁際に座り汗が引くまでダベっている者、そんな彼女らを尻目に、今日の私は、キャプテンのくせに真っ先に部室に戻り、制服に着替える。
皆には「今日、これから塾行かなきゃ…」と嘆くふりをしながら体育館を出てきた。
すごい汗かいたからシャワー浴びてから帰りたいくらいだけど、その時間も惜しい。
早く彼に会いたい。
私にとって人生初めての彼氏。
とりあえず入念にデオドラントスプレーして、額の汗を抑え、遅れて部室に帰ってきた皆にバレないように、待ち合わせ場所の少し離れた第2体育館の裏手にある西門前に走る。
“ちょっと遅れちゃった。待ってるかな?”
そう思いながら全力疾走。
そしてまた汗をかいてしまうという悪循環。
なにやってんだか。
「(若野先輩!)」
夕暮れ迫る校舎の陰から、小声なのか大声なのか分からない声で私の名前が呼ばれた。
私は立ち止まり、名前の呼ばれた方を振り返る。
そして息を整えながら近づいた。
「ごめん。待った?」
「いや、俺もいま来たとこ」
そう言って彼、原田拓也は笑った。
彼は二つ下の高校一年生。
最初のコメントを投稿しよう!