2人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもと変わらない同じ光景。
同じ時間、同じアラーム音、同じ天井。
耳元で鳴り響く音を無心で止める。
「…………」
少しずつ意識が覚醒し、私は朝練があることを思い出した。
それと同時にその後の授業が嫌で仕方がない気分にもなる。
嬉しさが半分ともう半分は嫌な気持ちが入り混じったまま、着替えて朝ごはんを食べる。
いつもと変わらない私の一日が始まった。
毎日繰り返される変わらない日常が私は大嫌いだ。
そう思うようになったのは一流私立大学付属の小学校に合格した瞬間からだ。
あの日から私の心は沈んだまま。
喜ぶ両親の顔が高校2年生になった今でもハッキリと思い出せるぐらいに。
元から体を動かす方が好きな私は苦手な勉強を頑張った。
その時は両親を喜ばせたかったし、少しでも早く勉強から解放されたい一心で励んだ。
だけど、いざ入学が始まってからというもの私の日常に変化がなくなった。
朝起きて、学校へ行き、勉強して、帰って寝る。
時計の針が正確に時間を刻むように、同じ日常を繰り返した。
毎日。毎日。毎日。
そんな毎日に嫌気がさし、私は何か変われるものやきっかけを探すことにした。
部活や委員会、行事など思いつく限りのこと取り組んだが、どれも私の心には響かなかった。
「そうだ。今まで興味もなかったところに入ってみようかな」
中学の時に妥協で入った部活で学んだ嫌な経験を活かし、違うことをしようと思った。
その時、学校で最弱部と噂されている卓球部の看板が目に入った。
部員数は少なく、部室も狭い上にホコリをかぶって汚い。
誰もが拒否するであろうその光景を見た瞬間、なぜか私の心は反応した。
それからというの部活だけが毎日、私に刺激をくれた。
今まで見向きもしなかったせいかもしれないが、少なくとも卓球は私にとって面白く、すごく楽しい部活である。
そして部活の後輩ができた時、私の心は今までよりも大きく高鳴った。
それはいつもと同じ道を歩き、朝練へ向かう途中のことだった。
「おはようございます」
不意に声を掛けられ、驚きを隠せなかった。
「お、おはよ」
少し言い淀んでしまったが、返事をすることができた。
すぐ横を同じ制服の子が通り、自分とは違うリボンの色が目に入る。
「後輩だけど。初めて見る子だ」
それが私とあの子の最初の出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!