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「心配しなくてもキリちゃんを置いてかないわ」
「ここで置いてかれたら…あたし、たぶん転がってくよ?」
キリは不安そうに後ろを見やると、結構な距離を登ってきたことがわかる。上り坂なのでもちろん距離と共に高さもそれなりにあり、遠くに見える海がキラキラと光を反射しているのが見える。歩くだけならさほど苦でもないだろうが、本来なら車椅子で行くのは控えるべき角度の坂である。
それを断らなかったのは、ノノがどうしても!と頼み込んだせいもあるが、キリもノノの事を信用していたからだ。ノノが冗談でもここで車椅子の取っ手から手を離さないことは重々承知だ。
「大丈夫、もう少しよ。見えてきたもん」
そう言ってノノは輝かしい海と反対の方向に人差し指を向ける。そこには、鬱蒼と茂った木々に覆われた赤い鳥居があった。
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