8人が本棚に入れています
本棚に追加
最初こそは「楽勝ね!」と運動部ならではの余裕と傲慢さを見せていたが、その笑顔がやせ我慢になり、お百度参りの現実を知って無言になるのはすぐだった。
そしてノノの顔から笑顔が完全に消えいっそ怒りが見え始めた頃、具体的には真上にあった太陽が傾いてきた頃、一人の老人が通りかかった。
「こんなところでなにをしているんだい?」
「友だちが、お百度参りしているんです」
「はは、今どき古風だねえ。でもこの神社でお百度参りしたなんて話は聞いたことないなあ」
「私も聞いたことが無いです」
「なんのお願い事?」
「たぶん、病気を治したいんだと思います」
口ではそう言いつつ、キリは絶対そうであると確信している。
あまり触れてはいけない話題に踏み込んだことに気づいて老人が露骨に話題を避ける。
「それで、お友達は?」
「今、降りてきたみたいです」
視線の先を見ると、汗をだらだら流し、鬼気迫る表情で鳥居のふもとまで降りてきて、獣染みた息をつきながら再び階段を上がっていくスポーツ系少女だった。少女の見てはいけない野性的な姿を見て男性は言葉を失った。
「その…熱中症だけには、気をつけてね」
「はーい」
言葉を濁し去って行った男性を見送り、しばらくして再び鳥居に戻って来て鳥居の先を見上げるノノに声をかける。
「ねえ、もう帰らない?」
返事は帰ってこなかった。
キリもそれきり話さなかった。辛そうな彼女をただ見守っていた。
最初のコメントを投稿しよう!