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ノノがとうとう百度目のお参りをするときには、夕暮れの兆しを迎えていた。
ぷるぷると小鹿のように震える脚を無理やり動かして、鳥居の外に出る。
「百回…!」
その勢いでキリのところまで歩くとすぐ隣にズボンが汚れるのも気にせず座り込んだ。ふくらはぎがパンパンに膨れており筋肉痛は絶対だろう。
「百回、やった…!」
キリは何も言わず、スポーツドリンクをノノに渡す。
ごくごくと一気に水分を飲み込むノノをキリは黙って見ている。ぷは、と喉を潤したノノはようやく笑顔を取り戻して話し始める。
「こんなに、疲れたんだから、きっと…」
「私の、足も治る?」
ノノが一瞬ためらった言葉を、キリがはっきり口にする。
ノノの笑顔は早くも強張ってそのまま去っていく。
「ねえ、ノノちゃん、本当にそう思う?」
キリの問いかけは真剣だった。ノノは答えに詰まる。
「お百度参りで病気が治るって本当に信じてる?」
「ほ、本当に信じてる。…じゃなきゃこんな辛いことできないって」
口ではそう言いつつもノノはキリの顔が見られない。嘘はつけない。しかし、本心も言えない。だから真剣な目に応えられない。
身体を動かすことで、真剣に馬鹿げたことをして、本当に辛いことを見ないふりをしていたノノの心の底をキリが見ている。
「私、骨折じゃないんだよ。神経がちょっとずつ働かなくなるんだって」
そう言われてノノはキリの足を見る。言われたことが一言も理解できない。見た目はいつもと変わらないキリの脚だ。ノノには先ほどからこの脚が全くぴくりともしないのが信じられない。
「触って良い?」
「いいよ」
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