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「1000形、登山電車に車体の色合わせてあるんですね」
「スイスの登山鉄道にも通じる色であるな」
「レーティシュ鉄道ですね」
「さふである」
「昔は小田原まで登山電車の小さな車両が乗り入れていた。それを『里運用』と呼んでいたのだが、箱根湯本までの輸送力不足で4両編成の1000形に置き換えられたのだ。そのために線路も登山電車用の幅の広い線路と小田急用の狭い線路両対応の『三線軌条』も、今では登山電車の基地のある入生田まで。そこから小田原までは小田急用の狭い線路だけになっておるのだ」
「でも途中の鉄橋の枕木には幅の広い登山電車用の線路の跡がありますね」
「それも観察ポイントかも知れぬのう」
「もうすぐ観察ポイント、風祭駅ですね」
「さふなり。降車の準備をするのだ。忘れ物はないな」
荷物の指差確認をする二人。
「かばん、ヨシ、ペットボトル、ヨシ、カメラ、ヨシ!」
そのとき、駅の進行方向奥のカーブからローズカラーの何かが顔をのぞかせた。
「えっ、この風祭駅でGSEと行き違うの?! 写真写真!」
その鮮やかなローズカラーは、小田急の新型ロマンスカー・GSEだった。
カメラを構えたツバメは、さらにその前展望席の二人に気づいた。
「あの女性二人、なんかどっかで見た人達だなあ」
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