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 その時の言葉通り、その後も慎一は、ことある毎に北川の恋愛相談に付き合わされた。というよりも、段々、慎一の方から進んでアドバイスをしてやるようになった。そうでもしないと、北川の努力の方向が、どんどんと本筋から外れていってしまいそうだったからだ。  だから、こんなに親身になって相談にのってやっていたというのに、北川の口からでなく、クラスメイトの口から、北川が伊藤に二度めの告白をしたことを聞いて、女々しいとは思ったが、慎一は少し裏切られた様な気分になった。 「北川さん、また伊藤に告白したんだって?」  もやもやとした気持ちを抑えきれず、二人以外の人影がいなくなった教室で、慎一は北川に詰め寄った。 「なんで俺に一言の相談も……って、まぁ、そんな義理ないか。でも、まだ伊藤の反応もまともに確かめてなかったし、もう二回目の告白って、早過ぎだったと思うけど。なんでそんな先走った事しちゃったの?」  慎一の中で、二人は同じ「伊藤を北川に惚れさせる」プロジェクトのメンバーだった。それが、相談もなしに勝算のない行動をされるなんて、的外れな怒りだとしても、不服を感じずにはいられなかった。 「だって…」  北川は申し開きをしようとしたようだったが、すぐに口を噤んだ。 「『だって』、何?」  慎一は、らしくもなく煮え切らない北川の態度に益々不満が募り、詰問するような口調になってしまった。  北川は、「何でもない」と早口で言うと、逃げるように教室から出て行った。
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