3.

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「俺、北川さんに協力してるつもりだったけど、それが足引っ張るようなことになってたなんてな。俺たち、噂がぶり返さないように、これからはあんま話さないようにした方が」 「違うの!!」  可憐は慌てて、小田切の言葉を遮った。こんなことで小田切に距離をおかれてしまっては、伊藤に二度めの告白した意味が無くなってしまう。 「私が噂知られたくなかったのは、伊藤君じゃなくて、小田切君だから。あんな変な噂が立ったら、私の相談にのってくれなくなるんじゃないかって、不安になって、それで、私が好きなのは伊藤君だって広まればそんな噂なくなるんじゃないかと思ったの」  可憐は、教室では言う事が出来なかった弁明を、送話口に一気にまくし立てた。  可憐の言い訳が途切れた後、しばらく小田切は沈黙していた。その様子に不安になった可憐は、今度は小声で呼びかけた。 「もしもし…」 「あ、ごめん。いや、俺個人としては、別に、噂はどうってこともないというか、でも、それって、本末転倒?ていうか……あれ?…ん?」  小田切の要領を得ない態度に、可憐本来のせっかちな性格が疼きだした。 「で?結局、これからも相談にのってくれんの?くれないの?」  電話越しにも伝わる迫力に気圧された小田切は、「のりますのります」と慌てて返事をした。 その答えで漸く安心した可憐は、「じゃ、これからもよろしく。また学校で」と言い、小田切の「あ、はい」の返事を聞くと満足して電話を切った。  小田切からの電話に出る前はひどい自己嫌悪に陥っていた可憐だったが、彼との間の誤解が解けた今は、晴れ晴れとした気分で満たされていた。はて、自分はこんなに情緒不安定だったかと、可憐が不思議に思っていると、再び、彼女の携帯が鳴った。 「あ、ごめん。小田切だけど、その、伊藤には噂をどう思われてもよくて、俺とは話せなくなるから知られたくなかったって、それってさ、北川、本当は俺の事…」  北川可憐の(本当の)初恋は、こうして始まった。
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