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「どうでもいいことは覚えないだろ。俺が一年とき、先輩ね、俺に言ったんだ」
急に始まった話がなんのことだか、さっぱりわからない。
「俺、学年で一番ちっちゃくて、親が背なんてすぐ伸びるってぶかぶかの制服買ったもんだから余計みっともなくて『中学生だろ』って、からかわれてた。偶然通りかかったあんたは『そんなことでからかうの、どっちが中学生だよ』って言ってさ。怖いくらい涼しげな綺麗な目で。それから俺に『つまんないことに振り回されんな』って言ったんだよ」
「覚えてないわ」
「そうだろうね。『この前はありがとうございました』って、擦れ違ったとき礼言ったら『なんのこと?』って言われた」
「全く覚えてない」
くすっと皐月が息をこぼした。
「そ、ほんと全部どうでもいいってくらい、さらっと言った奏衣先輩は格好よかった。何度もそのときのこと脳内再生させたよ。仕草も、視線も、声も」
ーー そんなこと知るか。
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