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短編1 携帯電話
教室掃除のゴミ当番から戻り、教室の扉を開けると、窓際の床でスマートフォンが光を反射している。眩しさのあまり、ゴミ箱を落とした。ガタンと寂しい音が教室に響くだけ。
オレ、逢坂進は携帯電話をつまみあげる。キラキラ輝いていたのは、桜色のボディに施されたラメとハートのシール。大・小・大・大の順序は、高鳴る鼓動のよう。冷房が止まっているせいで手に汗が滲み、スマホが滑り落ちて自分のポケットにスッポリ入る。
そのとき、背後から足音が近づいてきた。
振り向くと廊下から朝倉ミオが顔を出した。彼女は短いスカートから伸びる細い脚をクロスさせ、化粧で飾った顔をげんなりさせる。
「逢坂、何一人でいるの? 寂しい人なの?」
「……ゴミ当番していただけだ」
オレが吠えると、朝倉は小さな子どもを相手にするように微笑む。
「誰も待ってくれなかったんだ? ウケんだけど」
「ウケんのはてめぇの顔だ。メイクが汗でドロドロだぞ?」
朝倉が慌てて手鏡を取り出して、自分の顔を確認する。その取り乱す姿に、お腹を抱えて笑ってしまった。
瞬間、朝倉の目が刃のように鋭くなる。
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