短編1 携帯電話

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彼女の頭を撫でる。彼女の髪はサラサラしていて多少乱暴に撫でても乱れない。しばらくすると彼女はムスっとした表情をやめて、しおれた花のように顔を俯かせる。 「逢坂くん、部員が二人減ったの。もう耐えられないからやめるんだって」 「パソコン部のつもりで入部したんだろ。長続きした方だ」  宥めようとしたが、マナカは不満げに唇を尖らせる。 「勘違いしないように『情報処理部』って命名したんだよ?」 「普通の高校生はITを学ぶ部活だとは思わねぇよ」  マナカは深いため息を漏らす。 「部員、二人だけになっちゃった」 「いいじゃねぇか、やる気のない奴が消えて」 「部員が三人いないと部は成立しないの!」  回転イスが悲鳴をあげるほど、マナカに体を揺さぶられる。 「動画サイトの有料会員や、レンタルサーバーの料金は部費で賄ってるんだからね!」  オレは顔をひきつらせた。オレも動画サイトのプレミアム会員料を部費で賄っている。プレミアムが解約になったら、秘蔵の動画の大半を失う。  ……部員を一人用意する必要がある。  そこで閃いた。オレはうなだれるマナカに桜色のスマホを差し出す。 彼女は眉間を寄せると声をあげる。 「この派手なのは、朝倉さんのスマホ!?」 「暗証番号を突破できないか? 朝倉の弱みを握って、うちの部に引き込む」 「だ、だ、だめだよ。個人情報なんだからぁ」     
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