短編1 携帯電話

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 困惑の表情を浮かべるマナカの顔を指でつまみ、無理矢理口角を引っ張りあげる。 「じゃぁ部費の分をバイトで補うか?」 「そうしたら……部活する時間がなくなっちゃう」  戸惑うマナカにすかさず耳元でささやいた。 「大乗だって、幽霊部員になってもらうだけだ。それ以上のことは朝倉にはしない」 「まぁ、幽霊部員になってもらうだけなら。しょうがないかな。部費入るし」  ついにマナカはブツブツ呟き、朝倉のスマホをいじり始めたのだった。           ☆  マナカが作業をしている間、パソコン室の窓から校庭を眺めていた。  いつの間にか大きな雲が空一面を覆っている。薄暗い校庭にはせわしなく動くサッカー部。その脇では朝倉ミオが、友人の大宮チサトと正門へ歩いていた。朝倉が一方的に話しかけて、大人しい大宮が相槌を打っている。大宮は絹のような黒髪が似合う女子だ。ナチュラルに整った容姿、制服越しからも感じる身体のほどよい肉付き。クラスでも、彼女を求める男は多い。もし教室に落ちていたスマホが大宮の物なら、と想像してしまう。     
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