0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
困惑の表情を浮かべるマナカの顔を指でつまみ、無理矢理口角を引っ張りあげる。
「じゃぁ部費の分をバイトで補うか?」
「そうしたら……部活する時間がなくなっちゃう」
戸惑うマナカにすかさず耳元でささやいた。
「大乗だって、幽霊部員になってもらうだけだ。それ以上のことは朝倉にはしない」
「まぁ、幽霊部員になってもらうだけなら。しょうがないかな。部費入るし」
ついにマナカはブツブツ呟き、朝倉のスマホをいじり始めたのだった。
☆
マナカが作業をしている間、パソコン室の窓から校庭を眺めていた。
いつの間にか大きな雲が空一面を覆っている。薄暗い校庭にはせわしなく動くサッカー部。その脇では朝倉ミオが、友人の大宮チサトと正門へ歩いていた。朝倉が一方的に話しかけて、大人しい大宮が相槌を打っている。大宮は絹のような黒髪が似合う女子だ。ナチュラルに整った容姿、制服越しからも感じる身体のほどよい肉付き。クラスでも、彼女を求める男は多い。もし教室に落ちていたスマホが大宮の物なら、と想像してしまう。
最初のコメントを投稿しよう!