短編1 携帯電話

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 だけど実際の持ち主は朝倉だ。攻撃的で人を見下すくせに妙になれなれしい。何よりも自分をごまかすような厚化粧が嫌いだ。マナカの手前では幽霊部員にするために脅すと言ったが、朝倉の弱みを握ったら厚化粧をはがしてコンプレックスだらけの顔を拝んでやる。  そんなことを考え、口角を緩ませたとき、 「解けた!」  視界の隅で、マナカが大きな伸びをした。  オレは彼女の手に握られるスマホをぶんどり、画面を確認する。朝倉の厚化粧に劣らず、たくさんのアプリで埋め尽くされている。  さて、どこから見てやろう。  適当にディスプレイをイジっていると、オレの傍らからマナカひょっこり顔を出した。 「逢坂くん、メールがいいと思うよ。もしかしたら彼氏とのやりとりがあるかも!」 「お前、さっきまで『個人情報』とか言ってただろう。メール見るなよ!」 「暗証番号解いちゃったし、見た方が得かなぁって。ほら、メール!」  オレの一喝にかまわず、マナカが喜々とした表情でメールの画面を立ち上げる。瞬間、彼女が笑顔のまま固まった。 「お、逢坂くん。これはどういうこと?」  マナカがオレの顔にディスプレイを押しつける。それを受け取り、メールを確認する。 『逢坂進さんから、メッセージが届いています』  送信先アドレスには有名なSNSサイトの名前が明記されている。     
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