短編1 携帯電話

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 オレとマナカは顔を一度見合わせ、本文にリンクされたURLを選択。朝倉はとんでもなくバカだ。自分のSNSに自動ログインできる設定にしている。だから簡単に、彼女のアカウントにログインすることができた。  メッセージ画面。そこには、オレの本名と同じアカウントとのやりとりが記されている。そして昨日の日付で記された最新のメッセージ。 『話したいことがあるの。明日の放課後、中央広場駅で待ってて 』  朝倉とやりとりしている、この逢坂進は一体だれなんだ?  熱を帯びたスマホを眺める。窓の向こうからサッカー部のホイッスルが鳴り響いた。         ☆  お天気お姉さんはお色気たっぷりに晴れと言っていたが、中央広場駅では小雨が降っている。電車を降りて急ぎ足で改札口を抜ける。目の前には中央広場が見える。広場いっぱいに漂うアジサイの香り。この地域一番の待ち合わせ場所と言われるだけあって、男女のペアを多く見かける。  そんな広場の中心にある噴水のそばで朝倉は傘を差して立っていた。手櫛を入れて髪を直し、あたりを見回している。  オレは紺色の折りたたみ傘を差し、顔を隠す。そして朝倉のスマホを画面を確認する。  ……オレの誕生日を入力すれば暗証番号は突破できる。 架空の逢坂進とのやりとりは見るだけで胸焼けがする。 『中学のとき顔のことで悪口を言われたの。それから素顔を見られるのが怖くなったんだ』     
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