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風でめくれないように、抑えつけているクロッキー帳だ。
「クロッキー帳、観るか?」
「……見てもいいですか?」
オレが頷くと、彼女はオットセイのように畳の上を滑り、テーブルの上に置かれたクロッキー帳に飛びついた。クロッキー帳には、山奥に住まう龍や、町で偶然見かけたケダマのような生き物等のデッサンが何枚も描かれている。
それらを食い入るように鑑賞する彼女は、四年前と変わらない無邪気さがあった。
その容姿を覗いては。
四年前、オレと彼女が初めて出会った日、彼女は小学校生を思わせる幼い女の子だった。背丈も小さく、物陰からオレが絵を描いている様子を伺っていたのを覚えている。 それがたった四年で、彼女は大人の女性の風貌になっていた。
窓から吹きこむ秋風に首筋をなぞられ、オレはそっと部屋の窓を閉める。窓ガラスには部屋全体と、泣いた後のように腫れぼったい目のオレだけが映っていた。
そのとき、カエデが「あ!」と声をあげた。
オレが思わず振り向くと、彼女が満面の笑みを浮かべ、
「四年前にお兄さんが、描いていたネコちゃんだぁ!」
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